腑の中にすとんと落ちぬ氷水
「五臓六腑に染み渡る」という言葉がありますね。暑い盛りに冷たい氷水など飲むと、水の通り道がはっきりわかる感じがします。「ああ、今胃の中に到達した」なんておもったりして。もう一つ「腑に落ちる」という言葉もあります。この俳句は、どちらかと言えば後者を詠んだものです。腑に落ちるというか、何かが体の中にすとんと落ちたという感じでした。
これは、「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」という本を読んだ時の想いを俳句にしたものです。この本は辺見じゅんの書いたノンフィクションですが、言葉では言い表せないようないろいろなことが押し寄せてきて、心の深いところで何か感じたというしか言えない感想なのです。私の俳句の原点というか、もし道に迷ったらもう一度ここに帰れば大丈夫というか、そんな本でした。読んだことのない人は是非一度読んでください。文藝春秋から単行本も出ています。
ただ、この絵はちょっと間違っています。季語の「氷水」はかき氷のことになります。ごめんなさい。